サンクコスト──なぜ“もう少しだけ”が止まらなくなるのか

何かを始めたとき、人は途中で引き返すのが苦手だ。

映画がつまらなくても席を立てないし、予約したご飯がイマイチでも食べ続けてしまう。

理由は、たいてい同じだ。

「ここまでのお金や時間がもったいない」

この感覚こそがサンクコスト。

すでに支払われてしまい、もう回収できないコストのことだ。

本来、失われたものは意思決定の材料に入れる必要はない。

けれども人間の脳は、そう割り切れるようにはできていない。

たとえば、

・半分まで読んだ本は、最後まで読まないと落ち着かない

・途中でやめたら“損した気分”になる

・引き返すことが「自分の判断の失敗」みたいに感じてしまう

こうした心の動きが重なると、「続ける」「もう少しだけやる」という方向に、どうしても傾いてしまう。

この「もったいない」は決して悪い感情ではない。

丁寧に物事を扱う心から生まれる、健全な価値観でもある。

ただし、文脈が変わると、この価値観が裏目に出てしまう。

*

たとえばトレードでは、ポジションが逆行しているのに

「ここまで耐えたんだから」

という気持ちが生まれる瞬間がある。

損切りの判断が鈍るのは、未来の利益ではなく、

“過去の自分の選択を守りたい”

という気持ちが強くなるからだ。

「間違っていなかった」と思いたい。

「戻ってきたら報われる」と感じたい。

この気持ちが、判断を未来から切り離し、

“いままでの投資”に引きずられていく。

サンクコストとは、未来ではなく過去が行動を支配する現象だ。

そしてこれは、誰もが経験する自然な心理。

弱さではなく、人が「自分の物語を守りたい」と願う気持ちの表れでもある。

*

もしあなたが何かを続けるべきか迷っているなら、

問いをひとつだけ変えるといい。

「これまで何を使ったか?」ではなく

「これから何が得られるか?」

未来から見て合理的かどうか。

それだけでいいはずなのに、人はどうしても“過去”の自分を背負ってしまう。

その重さに気づけるだけで、

一度立ち止まる余白が生まれる。

そしてその一歩が、

あなたの選択を、過去ではなく未来に向けて開いてくれる。

077 確率と希望の実験場 — SNS詐欺を行動経済学で読む 第4章|【FX】Re: Trader


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