睡眠の質を上げる「引き算」の思考法。
なぜ「正しさ」が増えるほど眠れなくなるのか?
「今夜こそ早く寝なければ」と焦るほど、
皮肉にも目は冴え渡り、時計の音だけが大きく響く――。
そんな夜を過ごしたことはありませんか?
現代の私たちは、不眠に悩むとき、無意識に「睡眠」を自分の意志で
コントロールすべき「タスク」のように捉えてしまいます。
最新のマットレス、
理想的な枕の高さ、
入浴の時間からカフェインの制限まで。
溢れる「正しい情報」を詰め込み、
眠る直前まで「自己採点」を繰り返してはいないでしょうか。
しかし、実はその「私がうまく眠ろうとする意志」こそが、
不眠の最大の原因かもしれません。
行動経済学的な視点で読み解けば、
睡眠は何かを達成する「インプット」の時間ではなく、
脳と身体が余計なものを削ぎ落とす「空白」の時間です。
本記事では、情報の波に飲まれて見失いがちな
「睡眠の本来の主語」
を取り戻すための視点を提示します。
「何を足すか」ではなく「何を持ち込まないか」。
眠れない自分を責めるのをやめ、
最古の生存戦略である「削る行為」に
身を任せるための、思考の調律を始めていきましょう。
眠りについて調べ始めると、すぐに情報があふれてきます。
マットレスは硬めか柔らかめか。
枕の高さは何センチが正解か。
仰向けか横向きか、呼吸は浅くないか。
レム睡眠、ノンレム睡眠、夢を見るのは良いのか悪いのか。
自律神経、腸内環境、ブルーライト、カフェイン摂取から入浴時間。
どれも間違ってはいません。
むしろ、よくできた説明ばかりです。
それでも、どこか息苦しい。
眠る前なのに、やることと考えることが多すぎる。
今日はちゃんと整えられただろうか、と自己採点が始まってしまう。
少しだけ視点を変えてみましょう。
睡眠は、本来「削る行為」だった
進化の視点に戻ると、睡眠はとても地味な行為です。
何かを達成する時間ではない。
能力を高めるトレーニングでもない。
知識を増やすインプットの時間でもない。
むしろその逆。
止める、切る、落とす。
判断を止める。
反応を止める。
使いすぎた神経を休ませる。
不要になった記憶の枝葉を間引く。
睡眠とは、身体と脳が「今日はここまで」と線を引くための時間でした。
削る行為に、努力は要りません。
削る行為に、管理も本来は不要です。
正しさが増えるほど、眠りは遠ざかる
問題はここからです。
現代では、睡眠の周りに「正しいこと」が増えすぎました。
しかも、それらはどれもそれなりに説得力がある。
結果として何が起きるか。
眠る直前まで、脳が管理モードのままになります。
・合っているか
・足りているか
・改善点はないか
これは仕事や運動なら役に立つ思考です。
でも睡眠にとっては、最大のノイズ。
削る時間に、評価と調整を持ち込んでしまった。
それが、眠りを難しくしている理由のひとつです。
「うまく眠ろう」が招く逆説
少し皮肉な話をすると、
「うまく眠ろう」と思っている時点で、眠りは主役ではなくなっています。
主役は「私」。
私は今、ちゃんとやれているだろうか。
私は失敗していないだろうか。
でも、前日の記事で触れた通り、睡眠の主語は「私」ではありません。
身体と脳は、条件さえ揃えば、勝手に眠ります。
逆に言えば、こちらが余計なことをし続ける限り、出番が来ない。
睡眠に関する情報は、
眠っていない時間帯に読むものなのかもしれません。
足す前に、持ち込まないという選択
ここで一度、整理してみます。
睡眠の質を上げるために、
何を足すかを考える前に、
何を持ち込まないかを考えてみる。
・反省を布団に持ち込まない
・明日の段取りを持ち込まない
・「ちゃんとできているか」という評価を持ち込まない
完璧な環境を作らなくてもいい。
最適解を見つけなくてもいい。
削る行為に必要なのは、空白です。
睡眠は最先端の健康法ではない
睡眠は、最新のメソッドでも、流行の健康法でもありません。
人類がずっと続けてきた、最古の生存戦略です。
それほど長く機能してきた仕組みが、少しの情報不足で壊れるとは考えにくい。
むしろ壊しているのは、善意で持ち込んだ「やりすぎ」かもしれません。
眠る前くらい、身体と脳に仕事を任せてみる。
削る行為を、ちゃんと削る。
それだけで、眠りは少し本来の形に近づきます。
今日のところは、何かを変えなくても大丈夫です。
ただ、布団の中に
「考えなくていいもの」を一つ、置いていかない。
それだけで、眠りはもう、始まっているのかもしれません。
※ ひとつだけ、補足として
ここまで「眠りは任せるもの」「邪魔をしないことが大切」という話をしてきましたが、
もちろんすべての睡眠の悩みが、考え方だけで解決するわけではありません。
強い不眠が続いている場合や、日中の生活に支障が出ている場合、
睡眠時無呼吸症候群やうつ症状など、医学的なサポートが必要なケースもあります。
そうしたときは、無理に自分だけで抱え込まず、専門の医療機関に相談することも大切な選択です。
この記事は、治療の代替ではなく、
「眠れない自分を責めすぎないための視点」として読んでもらえたらと思います。
お読みいただきありがとうございます。
【編集後記:主語を「身体」に返すための環境】
睡眠を「努力して勝ち取るもの」と考えているうちは、脳の覚醒は解けません。
本来、眠りとは私たちが成し遂げる仕事ではなく、身体が自律的に行う営みだからです。
私たちができるのは、何かを付け足すことではなく、
身体がその仕事をしやすいように「余計な介入を止める」ことだけ。
高スペックな機能に頼るのをやめ、ただ、一日の終わりを静かに受け入れるための
「手触りのある道具」に触れる。
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