「忙しいのに、何も終わっていない」一日の正体
気づくと、
いくつものことを同時にやっています。
メールを返しながら、チャットを確認し、
ブラウザのタブはいつの間にか開きっぱなし。
スマホも横に置いてあって、
通知が来たら、とりあえず目を通す。
なんだか今日は、
すごく「やっている」感じがします。
けれど、
夜になって一日を振り返ってみると、
思ったほど進んでいない。
「あれ、今日は何をしていたんだろうか」
そんなふうに、後になって気づく夜はありませんか。
マルチタスクの罠――私たちは「同時に」やっているわけではありません
少し前まで、
マルチタスクは
「仕事ができる人の証」
のように語られていました。
同時にいろいろこなせる。
手が止まらない。
常に動いている。
けれど実際にやってみると、
どうも疲れるわりに、
成果が少ない。
これは、
集中力が足りないからでも、
やり方が悪いからでもありません。
そもそも人間は、
本当の意味で
マルチタスクができるようにはできていないからです。
「脳の再起動」が、静かにエネルギーを奪っていく
実際に起きているのは、
作業A、作業B、作業Cを、
かなりの速さで
行ったり来たりしている状態です。
いわば、
高速で切り替え続けているだけ。
問題は、
この「切り替え」にあります。
切り替えるたびに、
脳は無意識のうちに、
・今どこまでやっていたか
・何を考えていたか
を、思い出そうとします。
この小さな再起動は、
目立ちませんが、
確実に脳のエネルギーを消耗させます。
気づかないうちに、
疲れだけが溜まっていく。
なぜ「やっている感」という偽の達成感に騙されるのか
不思議なのは、
マルチタスクをしていると、
達成感のようなものが
生まれることです。
忙しい。
動いている。
止まっていない。
脳はどうも、
「止まっていない状態」に
安心する性質があるようです。
結果が出ているかどうかより、
活動量そのものに
満足してしまう。
それは、
成果への満足というより、
「自分は停滞していない」と
信じたい気持ちに
近いのかもしれません。
その結果、
疲れているのに、
何も終わっていない一日が
出来上がります。
「シングルタスク」の再定義
では、一つのことだけに集中すれば
すべて解決するのでしょうか。
現実は、そう単純ではありません。
仕事には、割り込みがつきものです。
だから大切なのは、
マルチタスクを
完全にやめることではなく、
切り替えすぎない境界線を引くこと
だと思っています。
通知を切る勇気、「今はこれ」と決める境界線
たとえば、こんなことです。
通知を一旦切る。
外部からの侵入を、
少しのあいだ遮断します。
「今はこれ」と決める。
15分でも構いません。
一つの課題だけと向き合います。
戻る場所を決めておく。
割り込まれても、
すぐ再開できるように
メモを残しておく。
それだけでも、
脳の疲れ方は
驚くほど変わります。
まとめ
――能力の問題ではありません
最近は、
「今日はすごく進みました」
という日よりも、
「今日は静かに一つ進みました」
という日のほうが、
あとから効いている気がします。
マルチタスクが
悪いわけではありません。
ただ、
「やっている感」と「成果」は、
意外と別物です。
もし最近、
忙しいわりに
前に進んでいない感じがするなら、
それは、
あなたが怠けているわけでも、
能力が足りないわけでもありません。
単に、
脳を切り替えすぎて、
自分自身の境界線が
少し曖昧になっているだけ。
そんなふうに
考えてみても、
いいのかもしれません。
さいごに少しまじめな話を
■ エビデンス:マルチタスクの正体
ここまでの話は、あくまで日常の感覚からの考察でした。
ただ、この感覚には、
脳科学的にもそれなりの裏付けがあります。
最後に、その点だけ、簡単に触れておきます。
今回の考察を裏付ける、
脳科学における事実(ファクト)を補足します。
- 脳の切り替え(タスクスイッチング)
脳科学において「マルチタスクは存在しない」というのが定説です。
実際に行われているのは
「高速なタスクのスイッチング(切り替え)」であり、
切り替えのたびに脳のエネルギー源であるブドウ糖を
大量に消費します。これにより、
生産性が最大40%低下するという研究データも存在します。 - ドーパミンの罠
マルチタスク中に感じる「やってる感」は、
脳内で放出される快楽物質「ドーパミン」によるものです。
新しいタスクに触れるたびに脳は
刺激を感じてドーパミンを出しますが、
これは「作業が完了した」ことへの報酬ではなく、
単に「新しい刺激に反応した」ことへの報酬に過ぎません。
「進んでいないのに満足感だけがある」のは、
この脳の報酬系の仕組みによるものです。
それでも、責める必要はありません
こうして見ると、マルチタスクに陥るのは、ごく自然なことだとわかります。
脳は、効率よりも「刺激」や「安心」を優先するようにできている。
だからこそ、知らないうちに切り替えすぎて、疲れてしまう。
大切なのは、自分を律することよりも、
こうした仕組みを知ったうえで、少しだけ距離を取ることなのかもしれません。
それだけで、一日の終わりの感触は、ずいぶん変わってくるはずです。
お読みいただきありがとうございます。
脳は莫大なエネルギーを使用します。
プラスしていく健康法には注意が必要ですが、脳へのエネルギー補給という見方は持っていていいと思います。
ドーパミンという物質についての記事です。併せて読んでいただけると理解が深まると思います。
このブログでは、日常のふとした瞬間に感じる「生きづらさ」や、
心身の健康、そして人生を少し面白くする視点について綴っています。
読んでくださった今のあなたにとって、
次に必要な一編がここにあるかもしれません。
もしよろしければ、本棚を少しのぞいてみませんか?
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