後から振り返っても、あの時は本当に苦しかったと思うことがあります。

病気のこと。

仕事のこと。

お金のこと。

人間関係のこと。

その渦中にいた時、「大丈夫だ」とは思えませんでした。

むしろ、「終わった」と感じていました。

世界の景色は急激に狭くなり、目の前の出来事が人生のすべてに見えてしまいます。

たった一日の失敗が、自分という人間の価値そのものに見えてしまう。

そんなことがあります。

ここで、ひとつ不思議なことがあります。

それほど苦しかったはずなのに、なぜ今、私はこうして生活を続けているのだろう。

苦しみが嘘だったわけではありません。

怖さが勘違いだったわけでもありません。

あの時は本当に苦しかった。

それでも時間は流れ、その向こう側に別の景色がありました。

最近になって私は、相場の世界で使われる「マルチタイムフレーム分析」という考え方に、どこか似たものを感じるようになりました。

マルチタイムフレーム分析
複数の時間軸(チャート)を重ねて現在地を確認する考え方です。
短い時間では大きく崩れて見える場面でも、長い時間ではただの揺れに見えることがあります。
だから複数の時間軸を行き来しながら、自分の現在地を確認します。
人生にも、どこか似たところがあるように思うのです。

人は、1分足で人生を判定してしまう

トレーダーは、一つの時間軸だけでは相場を見ません。

1分足。

1時間足。

4時間足。

複数の時間軸を同時に見ながら、「今どこにいるのか」を判断します。

しかし人生では、私たちはつい1分足だけを見てしまいます。

上司の一言。

SNSで見かけた否定。

一日の体調不良。

一度の失敗。

思い通りに進まない予定。

そうした出来事は、本来であれば人生全体から見ればごく小さな揺れかもしれません。

けれど、その瞬間には世界のすべてに見える。

「もうダメだ。」

「終わった。」

「取り返しがつかない。」

そう感じることがあります。

もしかすると私たちは、人生を1分足で見ているのかもしれません。

人生には、複数の時間軸がある

【図①:人生は、複数の時間軸が重なって進んでいく】

ここで少し、視点を上げてみます。

人生には、複数の時間軸があります。

1分足は、今日の出来事です。

感情の揺れ。

SNS。

ニュース。

突発的なトラブル。

激しく上下するノイズ。

1時間足は、もう少し長い時間です。

停滞。

迷い。

試行錯誤。

方向性を探る時間。

そして、さらに上位の時間軸があります。

健康。

家族。

仕事。

習慣。

価値観。

生き方。

そして何より、

生まれてから死へ向かっていく、不可逆な時間の流れそのものです。

ここで重要なのは、上位足を「成功」や「成長」と読み替えないことです。

人生は相場ではありません。

誰も0歳には戻れません。

20代にも戻れません。

時間だけが進んでいきます。

だから人生の上位足とは、右肩上がりの成功物語ではなく、生きるという時間そのものなのだと思います。

どれも本当の景色です。

ただ、見ている時間軸が違う。

時間軸を上げると、今いる場所の意味が変わって見えることがあります。

逆行の時間を、敗北と呼ばない

【図②:マルチタイムフレーム分析】

人生には、追い風があります。

逆風があります。

停滞があります。

再加速があります。

これは特別なことではありません。

むしろ自然なことです。

トレードの世界では、大きな流れの中に押し目や戻りが存在します。

一直線に上がる相場はありません。

大きな波の中には、必ず小さな逆行が含まれています。

人生も同じなのかもしれません。

病気になる時期があります。

報われない時期があります。

お金が減る時期があります。

立ち止まるしかない時期があります。

大切な人を失うこともあります。

そうした出来事を、私たちは「失敗」や「敗北」と呼びたくなります。

しかし本当にそうなのでしょうか。

人生の上位足が、生きるという時間の流れそのものであるならば、その中に現れる逆風や停滞もまた、時間の流れの中に存在している一つの局面です。

もちろん苦しみはあります。

痛みもあります。

怖さもあります。

それを軽く扱うつもりはありません。

ただ、

逆行の時間を、敗北と呼ばない。

そう考えてみてもいいのではないかと思うのです。

もがいていい。

止まっていい。

やり過ごしていい。

呼吸を整えていい。

それは敗北ではありません。

諦めたということでもありません。

ただ、

今、その波の中にいる。

それだけなのかもしれません。

今の足に合った行動を選ぶ

時間軸によって景色が変わるなら、行動も変わります。

荒れている時に無理をしない。

感情のまま決断しない。

深追いしない。

少し距離をとる。

停滞している時には、整える。

準備する。

観察する。

小さく試す。

そして流れが来た時には、積み上げる。

習慣化する。

前へ進む。

トレーダーが知っている最も難しい技術の一つは、ノーエントリーです。

参加しない。

待つ。

観察する。

それは消極性ではありません。

立派な戦略です。

人生にも、自分の手番ではない時間があります。

その時に無理に動かないこと。

焦って結論を出さないこと。

今の局面に合った行動を選ぶこと。

それもまた、生きるための技術なのだと思います。

人生は、揺れながら進んでいく

人生には追い風があります。

逆風があります。

停滞があります。

再加速があります。

どれか一つだけの人生はありません。

私たちは、その時々の局面を生きています。

だから、今見えている景色だけで人生全体を判定しなくてもいい。

苦しみが消えるわけではありません。

出口が約束されるわけでもありません。

けれど、時間軸を少し上げてみると、今いる場所の意味が変わることがあります。

世界は1分足で荒れる。

人生は、もっと長い時間の流れの中にある。

私たちは今日という1分足を生きながら、その長い流れの中にいる。

そういうものかもしれません。


この記事では、時間軸を上げることで、今見えている景色の意味が変わるかもしれないという話を書きました。

では、その景色を見ている自分は、どこに立っているのでしょう。

私たちは前に進もうとしているつもりでも、実は不安を埋めたり、安心を取り戻したり、「マイナスをゼロに戻すこと」に多くのエネルギーを使っていることがあります。

その「判断の起点」について整理したのが、有料記事『0地点という考え方』です。

動いているのに進んでいない感覚。

頑張っているのに消耗してしまう感覚。

もし今回の記事を読んで、「自分はどこから物事を見ているのだろう」と感じた方がいたら、続けて読んでいただける内容かもしれません。



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