最近、国際ニュースの中で
「グリーンランド」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。
北極圏の利権。
地政学的な緊張。
安全保障の要衝……。
しかし、何気なく
カタカナで「グリーンランド」と検索してみると、
画面に並ぶのは、まったく別の顔です。
そこには、熊本にある巨大な遊園地
グリーンランド

の、楽しげな風景が広がっています。
この検索結果のズレに、
遊園地の存在を知らなかった私は、
一瞬出てきた写真にあっけに取られました。
そして、私たちが世界をどう捉えているかの
ヒントを見出した気がしました。
この記事はそこから始まります。
1|ニュースで語られる「もう一つのグリーンランド」
もちろん、
いま世界が注目しているのは遊園地ではありません。
話題の中心にあるのは、
世界最大の島であり、
デンマーク王国の自治領である
グリーンランドです。

かつては、
「地図の端にある、
氷に覆われた遠い島」
そんな認識が一般的でした。
しかし、今は違います。
地政学の世界では、
この島を
「北のシンガポール」
と呼ぶことすらあります。
赤道近くのシンガポールが、
マラッカ海峡という
「海の交差点」を押さえ、
世界の物流と経済のハブになったように。
温暖化によって氷が薄くなり、
夏季を中心に
航行可能な期間が広がりつつある北極海において、
グリーンランドは、
アジアと欧州を最短距離で結ぶ
「北極海航路」の要衝(ゲートウェイ)
になろうとしています。

2|国家だけでなく、世界のビジネスも注視していた
この変化に注目していたのは、
国家だけではありません。
北極海航路が
「夢物語」ではなく
「条件次第で現実になり得るルート」
として語られるようになるにつれ、
世界のビジネス界も静かに動き始めました。
海運会社、
エネルギー企業、
資源開発企業、
そして保険業界。
従来のスエズ運河ルートに比べ、
距離と時間を大幅に短縮できる可能性がある一方で、
氷の不安定さ、環境負荷、
先住民社会への影響といった
深刻な課題も存在します。
それでもなお、
「もし本格的に使えるようになったら」
という前提で、
北極海航路は
世界のビジネスが目を離せない選択肢
になっていきました。
さらに、
グリーンランドの地下には
レアアースをはじめとする
鉱物資源が眠っているとされ、
それらは再生可能エネルギー、半導体、
軍事技術に欠かせない素材でもあります。
3|アメリカが見逃せなかった、安全保障という視点
もう一つ、
グリーンランドの価値を決定的に押し上げているのが、
安全保障の視点です。
北米とロシアのほぼ中間に位置するこの島は、
ミサイル防衛や早期警戒といった観点から、
アメリカにとって
極めて重要な意味を持ちます。
航路。
資源。
防衛。
これらが重なった結果、
グリーンランドは
「遠い氷の島」から、
現実的に“欲しくなる場所”
へと姿を変えていきました。
4|トランプ氏の「買収発言」は終わっていなかった
この圧倒的な価値に、
露骨すぎるほど目をつけたのが、
2019年の
ドナルド・トランプ
氏でした。
彼が
「グリーンランドを買収したい」
という意向を示唆したとき、
世界は驚愕します。
デンマーク政府は即座に、
「グリーンランドは売り物ではない」
と一蹴しました。
この騒動は、
トランプ氏が予定していた
デンマーク公式訪問を
直前でキャンセルするという
異例の事態にまで発展します。
国家を不動産のように扱う
その手法には、
当然ながら強い批判が集まりました。
しかし、この話は
過去の珍事件で終わってはいません。
5|再燃する「取得構想」と、関税という圧力
北極圏の重要性が高まるにつれ、
この構想は形を変えながら
何度も蒸し返されてきました。
そして最近、
トランプ大統領は再び
「アメリカはグリーンランドを取得する必要がある」
と主張し、
拒否する欧州側に対して
関税を用いた圧力を打ち出します。
デンマークを含む欧州諸国に対し、
段階的に関税を引き上げるという方針は、
交渉カードとしては異例の強硬策であり、
国際的な緊張を一気に高めました。
これは、
単なる発言や思いつきではなく、
現実の経済手段を伴った圧力として
受け止められています。
6|現地で起きている「大規模な反対」
当然、
当事者であるグリーンランド側では、
こうした動きに対する
強い反対の声が上がっています。
首都ヌークを中心に、
「グリーンランドは売り物ではない」
というスローガンを掲げた
大規模な抗議運動が発生しました。
ここで、
グリーンランドの現実を
数字で見てみます。
面積は日本の約6倍。
一方で人口は、
およそ5万6千人ほど。
人口密度は、
1平方キロメートルあたり
0.03人前後という、
ほとんど人のいない土地です。
だからこそ、
外から見れば
「戦略拠点」や
「資源の島」として
語られやすい。
しかし、
そこには確かに
生活を営む人々がいて、
自分たちの土地と将来を
自分たちで決めたい
という意思があります。
7|「場所の価値」が生む、現実の摩擦
この一連の動きは、
単なる
「トランプの突飛な発言」
ではありません。
グリーンランドの
「場所としての価値」
があまりにも巨大になったことで、
世界の大国と、
そこに暮らす少数の人々との間に、
現実の摩擦が生まれている。
いま起きているのは、
その事実です。
8|アルゴリズムが映し出す、日本の「文化的な重心」
それにもかかわらず、
日本の検索結果は、
依然として「遊園地」が圧倒します。
私たちが
「トランプが買おうとした島」や
「北極海航路」を知ろうとして、
カタカナで「グリーンランド」と
検索を繰り返せば繰り返すほど。
皮肉にもアルゴリズムは、
「あぁ、この人は遊園地を探しているんだな」
と学習し、
熊本の遊園地を、
より上位に、より鮮明に表示していきます。
これは、
検索アルゴリズムのミスではありません。
その言語圏で人々が
何を記憶し、
何を繰り返し呼び出してきたかという、
「文化の記憶」
の反映です。
九州を中心に、
多くの日本人にとって
グリーンランドとは、
修学旅行や家族旅行で訪れる
「楽しさの象徴」
であり続けてきました。
だから、
世界が地政学を語っている最中でも、
日本の検索結果は、
まず遊園地を差し出してくるのです。
9|境界線のない「バイキング」というイメージ
ここで、
ひとつ面白い繋がりに気づきます。
グリーンランドを自治領とする
デンマークは、
かつて海を駆けた
バイキング(ヴァイキング)文化
の中心地の一つでした。
8世紀から11世紀。
彼らは荒波を越え、
現在のグリーンランドに到達した
最初のヨーロッパ人でもあります。
そして、日本の遊園地
「グリーンランド」にも、
船が大きく揺れるアトラクション、
その名も
「スーパーバイキング」
が存在します。

デンマークは、バイキングの国。
グリーンランドは、北欧のバイキングが拓いた島。
日本のグリーンランドには、
バイキングという乗り物がある。
遠い北極圏の地政学と、
日本のレジャー施設。
一見すると無関係に見える両者は、
歴史とイメージの糸によって、
思いのほか自然に
ゆるく結びついています。
10|全能感を楽しみ、摩擦を愛する
「知的な距離感」の持ち方
同じ
「グリーンランド」
という言葉を聞いて、
世界は
「地政学」を語り、
私は
「遊園地」を知る。
検索すればするほど、
遊園地の意味が
より強固になっていくこの現象は、
私たちが無意識に抱えている
認知の偏り
そのものです。
世界は、
単純ではありません。
同じ言葉でも、
見ている場所が違えば、
意味は簡単に変わります。
そのズレに気づけることが、
ニュースを読むうえで、
案外いちばん大切で、そこが面白いのかもしれません。
お読みいただきありがとうございます。
このブログでは、日常のふとした瞬間に感じる「生きづらさ」や、
心身の健康、そして人生を少し面白くする視点について綴っています。
読んでくださった今のあなたにとって、
次に必要な一編がここにあるかもしれません。
もしよろしければ、
本棚を少しのぞいてみませんか?
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こちらのグリーンランドにはホテルとセットで滞在できるようです。
Greenlandには簡単に行けませんが、こちらなら。
