年末年始は、少し時間の流れが変わる時期です。

忙しさが一段落したり、逆に生活リズムが崩れたり。

いつも通りの毎日から、ほんの少し外れるこのタイミングだからこそ、身体のことを一度だけ整理して考えてみるのも悪くないと思います。

何かを強く改めようとか、新しい健康法を増やそうという話ではありません。

ただ、「今の自分の身体は、どんな状態だろうか」を静かに見直す。そんな時間についての提案です。


意志では動かせない「人体のビッグ3」 ―― 脳・心臓・肝臓が沈黙の中で果たす役割

一番身近でありながら、私たちがほとんど知らないもの。それが自分自身の身体です。

私たちの体内には、「人体のビッグ3」と呼んでもいい重要な器官があります。脳、心臓、肝臓す。

もちろん、肺も腎臓も、腸も筋肉も、どれが欠けても生活は成り立ちません。

それでも、この三つが特別に語られるのには理由があります。

それは「止まると、ほぼ即座に取り返しがつかなくなる」という共通点があるからです。

しかも、これらビッグ3には特徴があります。

それは、私たちの「意志」で直接操作することができないという点です。

気合で動かすこともできなければ、理屈で説得することもできない。

それなのに彼らは、24時間、一度の休みもなく淡々と働き続けています。

は、判断と統合を担う中枢です。情報の意味づけを行い行動を選びますが、血糖値や睡眠などの「環境」に極めて敏感です。

心臓は、血液を循環させ、生命活動の土台を支えています。血液を循環させ、理屈よりも早く「不安や危険」を心拍の変化として察知します。

肝臓は、代謝と解毒を一手に引き受ける、いわば後方支援のような存在です。体内の老廃物を処理し続けますが、限界が来るまで声を上げない「沈黙の臓器」です。

脳が判断を担い、心臓が循環を支え、肝臓が後処理を引き受ける。

この三つは役割がまったく違いながら、絶妙なバランスで同時に働き続けているのです。


「疲れ」は休めば治るが「乱れ」は積み重なる ―― 血糖値と自律神経が心に落とす影

肩こりや眼精疲労、足腰の痛みといった一時的な不調は、比較的わかりやすい「疲れ」です。

これらは休めば回復し、ケアをすれば軽くなります。

一方で、身体の深い部分で起きている「乱れ」は、そう簡単には修復できません。

「疲れは回復できる。でも、乱れは積み重なる」。

この違いを認識することは、健康を考える上で非常に重要です。

例えば、以下のような「乱れ」が静かに積み重なっていきます。

  1. 血糖値の乱れ: 夜食や間食による乱高下は、意志の問題ではなく「エネルギー供給の不安定」を引き起こし、集中力や判断力を奪います。
  2. 腸内環境の乱れ: 「第二の脳」である腸の不調は、理由のはっきりしない不安感や落ち込みを招きます。
  3. 概日(がいじつ)リズムの乱れ: 体内時計のズレは睡眠の質を下げ、翌日の脳のスペックを確実に削ります。

「週末に寝溜めして取り返す」という考え方は、身体のシステムにとってはあまり現実的ではありません。

小さなズレは、借金のように毎日少しずつ積み重なり、やがて自律神経――活動と休息の切り替えを担うこの仕組みを介して、ビッグ3に静かなダメージを与えていくのです。


大病を経験して気づいた「身体の声」 ―― 何かが起きる前に、認知の歪みを修正する

実は私自身、数年前に消化器系の大きな病気を患いました。

その告知を受けたとき、それまでの生活の中で重ねてきた無理が頭をよぎりました。

強い後悔があったわけではありません。

生活のために必要だった面も、確かにあったからです。

ただ強く感じたのは、「人は、何かが起きてから初めて、原因を真剣に考える」という事実です。

これは意志の弱さではなく、人間の認知の特徴なのだと思います。

私自身も、問題が起きてから初めて、身体の声に耳を傾けるようになりました。

「自分だけは大丈夫」という認知の歪みは、問題が顕在化するまでなかなか修正されません。

しかし、大きな病は、その歪みを強制的に正してしまいます。


完璧を目指さず「致命的なズレ」だけを避ける ―― 年の瀬に身体を静かに見直す時間

脳・心臓・肝臓というビッグ3は、決して完璧を求めてはいません。

多少のズレが起きることは、生命のシステムとして最初から想定されています。

私たちが避けるべきは、その「多少のズレ」が修復不能な「致命的なズレ」に変わることだけです。

劇的に生活を変える必要も、理想的な健康法を完璧に実行する必要もありません。

年末年始のこの時期に、ほんの少し立ち止まって、自分の内側で起きている「小さな乱れ」に目を向けてみる。

それだけで、身体は案外、持ちこたえてくれます。

ビッグ3は、今日も静かに働いています。

声を荒げることもなく、評価を求めることもなく、ただあなたを生かすために。

だからこそ、こちらから少しだけ、気にかけてみる。

年の切れ目に、そんな時間を持つのも悪くないと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。


【編集後記:自分の「スタッツ」を把握しているか】

「疲れ」は主観的な感覚ですが、身体の「乱れ」は数値に現れます。
健康管理の第一歩は、まず自分というシステムの正確なスタッツ(統計)を取ること。
体重、血圧、体組成……。
それらのデータを計測し、客観的に眺めることから、すべての意思決定が始まります。

感覚だけに頼らず、事実に基づいて自分を整える。
そんな「身体の投資家」としての第一歩を、信頼できる計測器とともに踏み出してみませんか。

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