焦りは“手数料”かもしれない──待てない脳とトレードの心理学
■「ああ、また焦って動いてしまった…」
相場を見ていて、つい焦ってポジションを取ってしまった。
含み益が出ると、すぐに利確してしまう。
反対に、含み損になると「戻るかも…」と判断が鈍る。
──そんな経験、ありませんか?
私たちは、待つことが苦手な生き物です。
投資やトレードの世界においては、
この「待てなさ」がじわじわと資金を削っていきます。
この現象を、ウォーレン・バフェットが象徴的に表したとされる
ある金言が教えてくれます。
株式市場は、せっかちな人から、忍耐強い人へお金を移す装置だ。
■ 待てない脳の正体とは?ドーパミンと“今すぐ”の誘惑
行動経済学では、人間のこの“今すぐ欲しい”という傾向を
「現在バイアス(Present Bias)」と呼びます。
たとえば──
- 明日もらえる1万円よりも、今日もらえる5千円を選んでしまう
- 本当はもう少し持っていた方がいいのに、すぐに利確してしまう
この“今すぐ”に飛びついてしまうのは、
ドーパミンが「報酬の予感」に反応するからです。
脳が「いま得をするかも!」と興奮してしまうのです。
それが、合理的な判断をじわじわと壊していきます。
■「待てる」ということは才能ではない
「待てないのは私の性格だから…」と思っていませんか?
実は「待つ力」は、脳の使い方と環境設計で身につけることができます。
たとえば──
- チャートを見る時間を決めておく(例:1日2回)
- SNSやニュースに触れる回数を減らす
- “自分ルール”に沿ったパターンの時しかエントリーしない
- 「逃した利益」は数えない(←これは意外と重要)
これらの工夫は、すべて「待てる自分」をつくる外側からの設計です。
感情に頼らず、仕組みで“焦りのスイッチ”を減らすことができます。
■ 私たちはどこで“手数料”を払っているのか
証券会社に払う手数料とは別に、
私たちは「焦り」という名の見えないコストを払っているのかもしれません。

- ノイズで飛び乗ったエントリー
- 利益を伸ばせたはずの場面での早すぎる利確
- 持っていれば戻ってきたポジションを切ってしまった
それらはすべて、「待てなかった代償」──
