イナーシャという魔女と、「めんどくさい」の呪文

「なんでこんなに動けないんだろう?」

そんなふうに自分にモヤモヤしたこと、ありませんか?

保険の見直しをしようと思いながら1年が過ぎたり、

通知がうるさいと感じつつスマホ設定を後回しにしたり。

頭では「やったほうがいい」と分かっているのに、なぜか行動に移せない。

その理由のひとつが、イナーシャ(inertia)です。


イナーシャとは?──「変わらないこと」を選び続ける力

イナーシャとは「心理的な慣性」のこと。

もともとは物理学で「止まっている物体は止まり続ける性質」として知られていますが、行動経済学では「人が今の状態を維持し続けたくなる力」として使われます。

「あとでいいや」「今はタイミングじゃないかも」

――これが繰り返されると、動かないことが“普通”になってしまうのです。


「めんどくさい」が呼び出す、現状維持の魔女

こうした心理的な停滞を生むのが、「めんどくさい」という口癖です。

この言葉を唱えた瞬間、私たちは“イナーシャという魔女”を呼び出してしまうのです。

彼女は、すぐに行動できない私たちを責めることなく、ただそっと現状にとどまらせてくれます。

変化のリスクを避け、後悔も不安も感じない“安全な場所”にとどまらせるのです。

でも、その優しさが、やがて重たく感じられてきます。


解決のカギは「完了」ではなく「接触」

このイナーシャに抗うために大切なのは、

いきなり完璧にやり切ることではありません。

  • 書類を開くだけ
  • 1分だけ画面を見る
  • タイトルだけ打つ

“触れるだけ”でいいのです。

それだけで、「動けた自分」を感じることができます。


最後に:イナーシャと、うまく付き合う方法

イナーシャは怠けではありません。

むしろ、変化を怖がる私たちの自然な心の動きです。

だからこそ、戦うのではなく、構造で付き合い方を設計することが大切です。

「今日は完了できなかったけど、触れただけでOK」。

そんなふうに、自分に小さな“動けた感覚”を与えてみてください。

059 イナーシャを呼ぶ「めんどくさい」という呪文――現状維持の森に棲む魔女|【FX】Re: Trader