「待つ」という才能──手番の外で呼吸する力
トレードをしていると、なぜか「動いていない自分」が悪いことのように感じる瞬間があります。
チャートが動くたび、心もざわつく。
“見逃す”ことが“損をすること”のように錯覚してしまうのです。
けれど、本当に価値があるのは「動ける瞬間」ではなく、「動かないでいられる時間」なのかもしれません。
将棋の名人は、相手の手番でこそ深く呼吸しています。
相場でも同じです。
値動きが激しいときほど、私たちは「待つ」という行為に知性を宿す必要がある。
トレードにおける“待つ”とは、ただの静止ではありません。
それは、「手番ではないことを受け入れる勇気」です。
焦りはいつも、「今がチャンスかもしれない」という思考から生まれます。
しかし本当に恐れるべきは、チャンスを逃すことではなく、自分の手番を誤認してしまうこと。
動くべき瞬間を待てる人だけが、動く瞬間に迷わず決断できる。
これは精神論ではなく、行動の設計です。
たとえばエントリーを“見送る”日が続いても、それは何もしていない日ではない。
ルールを守り、衝動を見送り、統計的優位を待てた日なのです。
「今日は動かなかった」ではなく、「今日は待てた」と記録する。
それが、トレーダーとしての本当の訓練になる。
手番の外で呼吸できる人は、どんな場面でも崩れません。
市場が熱狂しても、自分の体温を一定に保てるからです。
明日もまた、手番を待つ一日を。
それが続くほど、静かな強さが育っていきます。
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#トレード心理 #行動経済学 #Re: Trader哲学
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