イチョウという、不思議な生き物のそばで生きている私たち

今日、家々の屋根の上に小山のようにそびえているイチョウを見ました。

イチョウの大木を見上げると、人間の時間が急に短く感じられます。

街路樹としてあまりに身近なのに、その正体は“植物界の例外処理”。どこか世界観が一段ズレているような樹木です。

恐竜時代から姿を変えずに生き残っていることから「生きた化石」と呼ばれますが、面白いのはそこから先。科学的に見ても、歴史的に見ても、イチョウには“引っかかるポイント”がいくつもあるのです。


1. DNAの系統樹で「単独の枝」に立つ奇妙さ

イチョウは、イチョウ綱・イチョウ目・イチョウ科・イチョウ属が全部ひとつずつ。

植物の分類表を眺めると、この部分だけ “ぽつん” と島が浮いているみたいに孤立しています。

仲間がいない。

近くに似た種もいない。

恐竜時代の親戚はみんな絶滅し、イチョウだけが今日まで生き残った。

生物の進化の流れの中で、ここまで“独り”で立っている存在は珍しい。

DNA的には「他の植物と似ていない」方向に振り切れていて、生命史を語るうえでもかなり異端です。

この“孤立したポジション”は、イチョウを見るときの視界を自然と広げます。

今日の風、今日の天気、その横で数億年単位の記憶を持っている木が立っている。時間感覚がふっと揺れます。


2. 野生のイチョウは“ほぼ絶滅”…と思いきや

長い間、イチョウは

「人が守ったから絶滅せず残った植物」

と考えられていました。

確かに街路樹や寺社の境内でよく見るのは人が植えたものですし、形も整っていて“栽培感”が強い。

しかし21世紀に入ってDNA解析が進むと事情が変わります。

中国の深い山奥で、人の手では説明できない遺伝的多様性を持つ個体群が見つかりました。

栽培品種とは明らかに系統が違う。

いまの通説はこうです。

「野生のイチョウは、わずかだが本当に残っていた」

人類が広めたのではなく、

イチョウ自身が人類文明をまたぎ、自然のどこかでひっそり生き続けていた。

この事実は、イチョウを見るときの風景をすこし変えます。

街路樹の一本一本が、遠い“野生の記憶”につながっているように感じられる。


3. 火事にも放射線にも強い。イチョウの生存戦略は“執念深い”

イチョウは生存力が異常に高い植物です。

火に強い、煙に強い、都市環境に強い。

広島の爆心地で、最初に芽吹いた植物の一つもイチョウでした。

ゲノムが非常に保守的で、壊れにくく、突然変異も少ない。

「変わらないこと」そのものが、生き残る戦略になっているような植物です。

普通の進化は環境に合わせて姿を変えますが、イチョウは逆。

“自分のスタイルを変えずに、環境のほうが変わるまで待つ”

そんな風に見える。

これが、数億年を生き抜いた理由のひとつ。


4. そして、私たちの日常との接点

ここからが、人間の日常とイチョウが静かにつながる部分です。

イチョウは頑固なまでに“変わらない”。

しかし季節が来れば葉を落とし、また芽を出し、淡々と循環を続ける。

人間は逆に、毎日判断し、悩み、方向性に迷い、変化に追われて生きています。

ときどき、ほんの少し疲れたときにイチョウの下に立つと、あの木は何も語らないのに、時間のスケールを整えてくれることがあります。

急ぐ必要のないことを急いでいたり、

変えなくていいことを無理に変えようとしたり、

そんな私たちの浅い呼吸を、すこし深くしてくれる。

イチョウの木の前では、

「いまの悩みはこの木にとっては1年の揺らぎにも満たない」

そんな感覚が自然と湧く。

それが不思議な安堵になる。


5. イチョウと人間の“時間感覚”の違いが教えてくれること

イチョウは、季節と時代の両方を何百回も見送ってきた存在です。

私たちは、数十年の人生の中で迷い、揺れ動きます。

両者の時間感覚はまったく違う。

だからこそ、イチョウの大木を見たとき、心が少し落ち着くのかもしれません。

“長い時間軸の中で見ると、いまの揺らぎは大した波ではない。”

イチョウは声に出さず、ただその姿だけでそう教えてくれるような気がします。


おわりに

私たちの日常には、イチョウのように黙って立っている“長い時間軸の存在”がときどき必要です。

街を歩くとき、ふと見上げた一本の樹木が、そんな役を果たしてくれることがある。

イチョウはただの街路樹ではなく、

人間の時間感覚をそっと整える生きたメタファーなのかもしれません。

noteにいろいろな記事を書いています。行動経済学やアドラー心理学などをベースとして、Re: Traderなりの視点、切り口でさまざまなことを読み解いています。ぜひ読んでみてください。

001 ルールを守るという挑戦 自己紹介 はじめてのnote|【FX】Re: Trader

このブログでは、日常のふとした瞬間に感じる「生きづらさ」や、

心身の健康、そして人生を少し面白くする視点について綴っています。

読んでくださった今のあなたにとって、

次に必要な一編がここにあるかもしれません。

もしよろしければ、本棚を少しのぞいてみませんか?

👇 Re: Traderを深く味わうための「最初の一歩」をまとめました 👇