経済は“未来を信じる脳”から始まった
経済について考える、というと、
どこか難しくて、自分の暮らしからは少し離れた話に感じられがちです。
株価、金利、インフレ、成長率。
ニュースではよく耳にしますが、それが自分の日常とどうつながっているのかを、じっくり考える機会はあまり多くありません。
けれど私たちは毎日、
働き、支払い、選び、待ち、将来を考えながら生きています。
それらはすべて、経済の中で行われている行為です。
それにもかかわらず、
経済はいつの間にか「人間から切り離されたもの」として語られるようになりました。
まるで、数字や制度だけで自律的に動いている存在のように。
この違和感が、このシリーズの出発点です。
経済は本当に、合理的な判断や効率的な制度だけで成り立っているのでしょうか。
それとも、もっと人間くさいもの――
不安や期待、信頼、待つ力、裏切られるかもしれないという怖さ――
そういった感情や性質の上に築かれているのでしょうか。
ここでは、経済を制度や市場の側からではなく、
市井に生きる人々の感覚から、もう一度考えてみたいと思います。
私たちは日々、ほとんど疑いなくお金を使っています。
コンビニで商品を手に取り、レジで支払う。
ネットで注文し、数日後に届くのを待つ。
銀行口座の数字を見て、生活設計を立てる。
この一連の行動に、私たちはあまりにも慣れすぎています。
しかし、立ち止まって考えてみると、ここにはひとつの奇妙な前提が隠れています。
私たちは常に「未来」を信じて行動している、という前提です。
この紙切れや数字が、
明日も、来月も、来年も、
誰かにとって価値を持ち続けると、私たちは信じています。
経済とは何でしょうか。
市場とは何でしょうか。
貨幣とは何でしょうか。
その答えは、数式や理論よりも先に、人間の脳の性質の中にあるように思えます。
動物は、未来をあまり信じません
多くの動物は、基本的に「いま」を生きています。
目の前に餌があれば食べ、
危険があれば逃げ、
チャンスがあれば繁殖します。
これは非合理ではありません。
むしろ進化的には、きわめて合理的な行動です。
未来の餌は不確実であり、
将来の見返りは保証されません。
だからこそ「いま確実なもの」を選びます。
行動経済学で言えば、時間割引率が非常に高い状態です。
未来の価値は、大きく割り引かれます。
ところが人間は、この点で異常とも言える進化を遂げました。
人間は「見返りの遅れ」を受け入れます
人間は、すぐに返ってこない行為を、ごく自然に行います。
子育て
教育
貯金
投資
共同作業
契約
約束
信用
これらはすべて、「将来の何か」を前提にした行動です。
いまの労力に、いまの報酬はありません。
あるのは、未来への期待だけです。
この能力――
見返りの遅れを受け入れる能力――こそが、
人類の経済行動の根にあるものです。
進化の視点で見ると、これはかなり危うい賭けです。
未来は裏切るかもしれません。
相手は約束を守らないかもしれません。
努力が無駄になる可能性もあります。
それでも人類は、この賭けを選び続けてきました。
なぜでしょうか。
協力が、遅れて返ってくる世界を生きてきたからです
人類は長い時間、集団で生き延びてきました。
狩りは共同で行われ、
食料は分配され、
子どもは複数人で育てられ、
怪我人や弱者も一定程度守られてきました。
ここでは、「今すぐの見返り」は期待できません。
しかし、協力しない個体は、長期的に生き残れなかったのです。
今日助けた相手が、
明日、自分を助けるかもしれない。
今年分けた食料が、
来年、返ってくるかもしれない。
こうして人類は、
「未来に返ってくるかもしれない価値」を
想像し、耐え、信じる脳を育てていきました。
この進化的特性が、そのまま経済行動の土台になっています。
貨幣とは「未来への信頼」の記号です
貨幣の本質は、モノではありません。
金や紙やデジタルデータそのものに、価値があるわけではありません。
貨幣とは、
「これを持っていれば、未来に何かと交換できる」
という社会的な信念の結晶です。
つまり貨幣は、
未来を信じる能力がなければ、成立しません。
この信念が壊れたとき、
経済は一瞬で崩れます。
ハイパーインフレ
通貨危機
信用崩壊
取り付け騒ぎ
これらはすべて、「未来への信頼」が失われた瞬間に起こります。
経済とは、
市場や制度そのものではなく、
人間の脳内にある「未来への信頼」を社会的に安定させる装置なのです。
経済学が扱えなかった前提
伝統的な経済学は、
合理的な個人を前提にしてきました。
しかし、
「なぜ人は未来を信じられるのか」
「なぜ遅れて返る見返りに耐えられるのか」
という問いは、ほとんど正面から扱われてきませんでした。
それは経済以前の問題、
人間という生物の設計の問題だからです。
行動経済学が明らかにしたのは、
私たちが合理的ではないという事実でした。
しかし、もう一段深く見ると、
その非合理の多くは、
協力と経済を可能にするための進化的仕様でもあります。
おひとり様の時代に、経済を考え直す意味
現代は、「ひとりで生きる」ことが可能な時代です。
しかしそれは、経済という巨大な未来保証システムの上に成り立っています。
ひとり暮らしができる。
食料を買える。
医療にアクセスできる。
安全を確保できる。
これらはすべて、
見返りの遅れを受け入れる無数の他者によって支えられています。
私たちは孤立しているわけではありません。
むしろ、かつてないほど
見えない協力と信用の網の中で生きています。
経済とは、
未来を信じる脳がつくり出した、
人類最大の共同幻想であり、
同時に、きわめて現実的な生存装置です。
経済を、もう一度「市井」から考えます
経済は、冷たい数字の世界ではありません。
それは、人間が
「未来を信じてしまう生き物だった」
という事実から始まっています。
だからこそ私たちは、
不安にも揺れ、
過剰に期待し、
ときに裏切られ、
それでもまた未来に賭けてしまいます。
経済を理解するとは、
市場を理解することではありません。
市井に生きる人々が、
どんな脳を持ち、
どんな時間感覚で世界を生きているのかを
理解することなのだと思います。
お読みいただきありがとうございます。
ノートにも色々な記事を書いています。ぜひ訪ねてみてください。きっとちょっとしたヒントや気づきが見つかると思います。
001 ルールを守るという挑戦 自己紹介 はじめてのnote|【FX】Re: Trader
このブログでは、日常のふとした瞬間に感じる「生きづらさ」や、
心身の健康、そして人生を少し面白くする視点について綴っています。
読んでくださった今のあなたにとって、
次に必要な一編がここにあるかもしれません。
もしよろしければ、本棚を少しのぞいてみませんか?
👇 Re: Traderを深く味わうための「最初の一歩」をまとめました 👇
