ダニング・クルーガー効果という、

人間がよくハマる

「痛い認知のクセ」があります。

これを聞いて、

「ああ、あるある」と思った人は、まだ安全圏。

「もしかして自分の話かも」と思えた人は、

かなり思慮深い人です。

逆に、

「自分には関係ないな」と感じた人ほど、

一度だけ、立ち止まってみたほうがいいかもしれません。


1. 仕事をできない人ほど「簡単だった」と言う

これは、仕事の現場ではよくある光景です。

何か作業や業務を終えたあと、

「簡単でした」

「特に問題なかったです」

と、さらっと言う人がいます。

一方で、

本当にその仕事の難しさを知っている人ほど、

こんな言葉を口にします。

「今回は条件が良かっただけです」

「次も同じとは限らないですね」

「運の要素も大きかったと思います」

どちらが有能そうでしょうか。

実は、

仕事を「簡単だった」と感じる状態というのは、

仕事を完全に理解している状態とは限りません。

むしろ、

難しさそのものに気づいていない状態

であることも多いのです。

ダニング・クルーガー効果は、

この「見えていないことが見えていない」

段階で、自信を最大化させます。

心理学では、

この自信満々な初期段階を

「馬鹿の山」と呼びます。

その後、現実を知って

「絶望の谷」に突き落とされ、

そこから地道に学習を積み上げて

「啓蒙の坂」を登ることで、

本当の専門性が身についていくのです。

私たちが専門性を高めていく過程では、誰もがこの「3つのステージ」を通り抜けます。

1. 「馬鹿の山」:Mount Stupid

少し知識を得ただけで「すべてを理解した」と錯覚し、自信が絶頂に達する状態です。
英語では皮肉を込めて Mount Stupid と呼ばれます。
視界が狭いため、リスクや複雑さが一切見えていません。


2. 「絶望の谷」:Valley of Despair

学習を深めるほどに、自分の無知さと課題の大きさに気づかされ、
自信がどん底まで急降下する状態です。
これを Valley of Despair と呼びます。
実は、この谷に落ちることこそが、真の理解への第一歩です。


3. 「啓蒙の坂」:Slope of Enlightenment

自分の無知を認め、地道に知識を積み上げ直すことで、
根拠のある自信を少しずつ回復していくプロセスです。
これを Slope of Enlightenment と呼びます。
「留保」ができるようになるのは、この坂を登り始めてからです。


2. なぜ自信満々な人は頼もしく見えるのか

人は、断言する人を評価しがちです。

即答できる。

迷いがない。

言い切る。

これらは一見すると、

能力や経験の証のように見えます。

けれど実際には、

不確実性を処理していないだけ、

想定外を考慮していないだけ、

というケースも少なくありません。

自信そのものは、

能力の証明ではありません。

自信は、ときに認知の粗さの副産物として現れます。

もちろん、

リーダーシップが問われる場面では

「即断即決」が必要な瞬間もあります。

しかし、

真に有能な人は、

思考のプロセスにおいては

ギリギリまで結論を留保し、

いざ決断する段において、

その全責任を背負う

という姿勢を持っています。


3. 人間関係ににじみ出る「思慮の差」

ダニング・クルーガー効果は、

能力以上に、

人間関係の中で強く現れます。

思慮が浅い段階では、

人をすぐにラベリングします。

「あの人はこういう人」

「結局、〇〇なタイプ」

判断が早く、

断定的です。

一方で、

思慮が深くなるほど、

人を簡単に語らなくなります。

状況や役割、タイミングによって、

人はいくらでも変わることを

知っているからです。

興味深いのは、

思慮が深い人ほど、評価を共有したがらない

という点です。

語らない。

断定しない。

保留する。

それが、

成熟した態度としてにじみ出ます。


4. AIが「浅い思考」を加速させる?

現代版ダニング・クルーガー効果

ここ数年、

この認知のクセを

静かに増幅している存在があります。

AI です。

AIは、

否定や検証を求められない限り、

ユーザーの前提を尊重します。

曖昧な考えを、

それらしく整理し、

筋の通った文章にしてくれる。

これは非常に便利です。

しかし同時に、

理解していないのに、

理解した気になる

という状態を生みやすくもあります。

AIによる

「もっともらしい肯定」が、

私たちを

「馬鹿の山」

留まらせてしまうのです。

問題はAIではありません。

肯定だけで思考を終わらせてしまう使い方が、

私たちのメタ認知を

狂わせているのです。


5. 有能さの正体は「留保」にあり

本当に有能な人の多くは、

安易な断言を避けます。

即答しません。

前提条件を語ります。

彼らの

「分からない」は、

知識が足りないのではありません。

検討すべき変数が多すぎるために、

思考を止めないという

誠実さの現れなのです。

それは、

自信がないからではなく、

自信を過信していないから。

ダニング・クルーガー効果から

抜け出すサインは、

「自分は分かっていないかもしれない」

と、

自分の立ち位置を

客観視できるようになることです。


6. 疲弊しない人間関係のコツ

一段高い視点から「観察」する

まず大切なのは、

こうした認知のクセが、

誰にでも、

そして自分自身にも

起こり得るものだと知ることです。

そのうえで、

他人が

「馬鹿の山」に登り、

自信満々に振る舞っているのを見ても、

人格を否定したり、

嫌悪したりする必要はありません。

「ああ、今は

そういうフェーズにいるんだな」

と理解し、

一段距離を取って接する。

具体的には、

相手の断定に

真っ向から反論するのではなく、

「もし〇〇という条件が

加わったらどうなりますか?」

と、

前提条件を問いかける形

コミュニケーションをとってみてください。

相手の認知の網から

漏れている要素を提示することで、

自分も消耗せず、

相手に

気づきのきっかけを

与えることができます。


思慮の深さは、

正しさではなく、

接し方に現れます。

注釈|ダニング・クルーガー効果とは何か

ダニング・クルーガー効果とは、知識や経験が少ない段階ほど、
自分の理解や能力を実際以上に高く評価してしまうという、
人間の認知の傾向を指します。

逆に、学習や経験が進むにつれて、
「自分はまだ分かっていないことが多い」と気づくため、
一時的に自信が下がることがあります。

これは性格や知能の問題ではなく、
判断に必要な材料そのものが不足していることで起きる
ごく自然な認知のクセです。

重要なのは、この効果は「他人にだけ起きるもの」ではなく、
誰にでも起こり得るという点です。

簡単に言えば、「分かっていないときほど、自信は大きくなりやすい」
という現象です。

お読みいただきありがとうございます。
人間は考え方、行動など、脳のクセから簡単には逃げられません。そういうものだと認知することが現実的な対応になるのではないでしょうか。


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