前回の記事では「なぜ駅伝やマラソンは、あんなに長時間見ていられるのか」というテーマから、脳が好む「静かな変化」と「終点」について考えました。
今回はその対極にある現象、現代人の脳を激しく揺さぶり続ける「ドーパミン」の正体について踏み込んでみたいと思います。
SNSを彷徨う“ドパガキ”たち。それは本当に「能力の欠如」なのか
最近、SNSでは「アドガキ」「ドパガキ」という言葉が飛び交っています。
アドレナリンやドーパミンの中毒になった“ガキ”という、やや冷ややかな揶揄を含んだ表現です。
その背景にあるのは、現代人の「集中力の欠如」への嘆きです。
- 机に10分も座っていられない。
- 映画を途中で止めて、別のショート動画を開く。
- 勉強は続かないのに、ゲームやSNSは何時間でも続けてしまう。
これらは、若者の根性がないから起きているのでしょうか。
それとも、私たちの集中力が根本から壊れてしまったのでしょうか。
実態は少し違います。起きているのは集中力の「喪失」ではなく、集中の“型”が極端に偏ったという「適応」なのです。
ドーパミンは「快楽」を運ばない。脳を突き動かす「期待」の罠
ドーパミンはよく「快楽物質」と誤解されますが、脳科学的な本質は異なります。
ドーパミンとは、「予測」と「次に何かが起きるかもしれない」という期待に反応する物質です。
- 次は何が出るかわからない(不確実性)
- もっと良い結果があるかもしれない(報酬予測)
この「かもしれない」という期待がある限り、脳は強い刺激を受け続け、手を止めることができなくなります。
SNSやゲームが強力なのは、快楽が大きいからではありません。
「終わりがなく、先が読めない構造」を持っているからです。
スクロールすれば次の刺激が、自動再生すれば次の動画が。
この「不確実な期待の連鎖」が、脳を終わりのない往復運動へと引きずり込みます。
失われたのは集中力ではなく、時間の「終点」である
ここで、前回の「マラソン」の話を思い出してください。
👉なぜ駅伝やマラソンは「飽きずに」見ていられるのか? 脳の構造から読み解く、静かな変化の心地よさ
私たちが駅伝や仕事、読書に集中できるのは、そこに「終点」があるからです。
「ここまで解く」「ここまで走る」というゴールがあるからこそ、脳は時間を見積もり、リソースを配分し、集中を維持できます。
一方で、現代のデジタル空間には「終点」が存在しません。
やめる理由が外部から与えられない限り、刺激は際限なく供給され続けます。
脳は、「終点のない時間」に対して持続的な集中を維持するようには設計されていません。
その結果、集中は細切れになり、時間の感覚は溶け出し、ただ刺激に反応し続けるだけの状態に陥ります。
これは若者だけの問題ではありません。
映画を倍速で見る、会議中にスマホを触る、長い文章を最後まで読めない――。
最初に時間感覚を壊されたのは、むしろ私たち大人のほうだったのかもしれません。
「待てない脳」をどう取り戻すか。設計はまだ、修正できる
「アドガキ」「ドパガキ」という言葉は、社会全体の時間構造が変わってしまったことの裏返しです。
私たちの集中力は壊れたのではありません。
集中の前提となる「時間という枠組み(終点)」を見失っているだけなのです。
では、どうすればこのハックされた状態から抜け出せるのでしょうか。
単に刺激を断つ「我慢」や「根性」の問題ではありません。
次回は、「なぜ人は待てなくなったのか」、そして「終点のある時間をどう取り戻すか」について、より具体的な解決策――リソースの再配分について考えていきます。
集中力は才能ではありません。
時間の扱い方の、一つの結果に過ぎないのです。
お読みいただきありがとうございます。
【編集後記:脳に「終わりのある時間」を取り戻す】
終わりのない刺激にハックされ、常に「次」を追いかけてしまう。
そんな脳の暴走を止めるには、強制的に情報の波を遮断し、
ゆったりとした時間の流れに身を投じるしかありません。
チェックインからチェックアウトまで。
窓から見える移ろう景色や、丁寧に運ばれる食事をただ味わう。
そこには、SNSにはない「心地よい時間の終点」があります。
「ドパガキ」の状態から抜け出し、本来の自分を取り戻す。
一晩、静寂の中に自分を置いてあげるだけで、
あなたの脳は驚くほどフラットな状態に戻っていくはずです。
今こそ、何もしない贅沢を。脳を癒やす滞在を、ここから。
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ドーパミンとはどんなものなのでしょうか?こちらの記事もあわせてお読みいただけると嬉しいです。
👉衝動と制限──“いまの自由”をどう扱えば未来が変わるのか
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