見返りの遅れを受け入れる能力――人類が獲得した奇妙な強さ
私たちは日々、
「すぐに報われないこと」を思いのほか多く引き受けながら生きています。
仕事での努力が、いつ評価されるかわからない。
勉強を続けても、成果が出るのはまだ先かもしれない。
誰かに親切にしても、見返りがあるとは限らない。
それでも人は、
待ち、積み重ね、信じるという行動をやめません。
この「すぐに返ってこない行為」を受け入れる力は、
当たり前のようでいて、実はかなり不思議な能力です。
今回は、この
「見返りの遅れを受け入れる能力」
が、進化・経済・心理の交差点にある重要な性質であることを、
市井に生きる人々の日常から考えてみたいと思います。
動物は、基本的に待ちません
多くの動物は、目の前の報酬を優先します。
いま食べられる餌。
いま得られる安全。
いまの繁殖の機会。
これは短絡的なのではなく、進化的には合理的です。
未来は不確実であり、
「後で返ってくるかもしれない報酬」は信用できないからです。
行動経済学で言えば、
これは時間割引率が高い状態です。
未来の価値は大きく割り引かれ、「いま」が重視されます。
ところが人間は、
この原則から大きく外れた行動をとるようになりました。
人間は、驚くほど待てる生き物です
人間は、すぐに返ってこない行為を選びます。
子育て
教育
修行
貯金
投資
信用取引
契約
保険
年金
これらはすべて、
「いま差し出して、あとで受け取る」行為です。
しかも、その「あとで」は、
いつ来るのか、
本当に来るのか、
はっきりしないことも少なくありません。
それでも私たちは、
未来に価値があると仮定して行動します。
この性質がなければ、
経済は成立しません。
見返りが遅れる世界で、人類は生き延びてきました
進化の視点で見ると、
人類が生きてきた環境そのものが
「見返りが遅れる世界」でした。
狩りは共同で行われ、
成功するかどうかは分からない。
獲物を得ても、分配される。
子育ては長期戦で、
何年も、何十年も手がかかる。
その見返りが返ってくる保証はありません。
それでも協力しない個体は、
集団の中で生き残れませんでした。
見返りは遅れるが、
協力しないともっと不利になる。
この環境が、
人間の脳に「待つ力」を刻み込みました。
経済は、この能力を前提に設計されています
経済を成り立たせている制度の多くは、
この「見返りの遅れを受け入れる能力」を前提にしています。
お金を貯める
将来のために学ぶ
信用で取引する
ローンを組む
保険に入る
年金を払う
どれも、「未来を信じる」ことが前提です。
もし人間が
「いま得にならないことは一切しない」
生き物だったなら、
これらの仕組みは成立しません。
経済とは、
待てる人間を前提に組み立てられたシステムなのです。
それでも、待つのは簡単ではありません
ここで重要なのは、
この能力が「楽なもの」ではないという点です。
見返りを待つあいだ、
不安が生まれます。
焦りが生まれます。
本当に正しい選択だったのか、疑いが湧きます。
だから人間は、
衝動に流れやすく、
近道に惹かれやすく、
「すぐ報われる話」に弱い。
これは意志の弱さではありません。
進化の中で獲得した能力と、
その限界が同時に表れている状態です。
現代は、待つ力が試される時代です
現代社会は、
即時報酬であふれています。
すぐに反応が返ってくるSNS。
ワンクリックで得られる消費。
短期的な成果を求める評価制度。
これらは、
私たちの「待つ力」を少しずつ削っていきます。
結果として、
長期的な判断が難しくなり、
本来は価値のある行動が、
割に合わないものに見えてしまいます。
市井に生きる人の選択としての「待つ」
それでも私たちは、
日常の中で待つことをやめていません。
すぐに評価されなくても働く。
成果が見えなくても学ぶ。
返ってくるかわからなくても、誰かを信じる。
これらは、
市井に生きる人々が
毎日、無意識に行っている経済行動です。
見返りの遅れを受け入れる能力は、
特別な人のものではありません。
それは、
社会を支えているごく普通の人々が、
静かに使い続けている力です。
見返りの遅れを引き受けるという選択
経済を、もう一度人間の側から見ると、
「待つ」という行為は、
非効率でも非合理でもありません。
それは、
人類が長い時間をかけて獲得した
生き延びるための戦略です。
未来を完全には信じられなくても、
それでも少しだけ賭けてみる。
その積み重ねが、
経済を動かし、
社会を維持し、
個人の生活を支えています。
見返りの遅れを受け入れる能力は、
弱さではありません。
それは、
人間が人間であることの、
とても静かで、しかし強い証なのだと思います。
noteにもたくさんの記事を書いています。そちらも見に行っていただけると嬉しいです。きっとヒントや気づきがあると思います。
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